韓国・台湾において凄まじい人気を博し、日本での配信にも大きな期待を寄せられている『Lineage M(以下、リネージュM)』。今回はそんな『リネージュM』の日本での運営の中心となる、エヌシージャパンのプロジェクトプロデューサー・大河内卓哉氏にインタビューし、本作の魅力や面白さ、リネージュMへのこだわりについて語っていただきました。
大河内卓哉氏について
『リネージュM』プロジェクトプロデューサー
大河内卓哉氏
はじめに:自己紹介
それでは本日はよろしくお願いします!
まずは大河内さんの自己紹介からよろしくお願いいたします。
改めまして、『リネージュM』のプロジェクトプロデューサーを務めている大河内です。
よろしくお願いいたします。
“プロジェクトプロデューサー”というのは具体的にどういった役割になるのでしょうか?
チームを横断して『リネージュM』全体を見るのが主な役割です。
各チームのメンバーの見ている方向がブレないように全体を見渡して、誰のためにどんな施策をするか、どういうメッセージを届けるかなどを考えて、うまく調節していくポジションになります。
いつの間にか略されて”PP”なんて呼ばれてます。
ちなみに『リネージュM』のリリースが延びたら僕の責任なので、その時は「おい!大河内!踏ん張れや!」とでも言ってやってください(笑)
日本での『リネージュM』運営のキーマンということですね!
そういえば大河内さんはかなりのゲーマーとも伺っていますが…。
そうですね。今は『リネージュM』で結構忙しいですが、ユーザーのリサーチも兼ねてゲーム自体はPC、家庭用、モバイルなど全部合わせて、年間150本くらいはプレイしています。
150本…すごい数ですね…。
ちなみにゲームジャンルの好き嫌いなどはあるのでしょうか?
基本的には好き嫌いなく触るようにはしています。得意不得意はありますが…(笑)
それでも、プライベートだとやっぱりファンタジー系のMMOをやっている時間が多いですね。
仕事の一環という面もありますが、学生時代から好きなゲームジャンルです。
最近はモバイルMMOもかなり増えてきて、移動中にもMMOを触っていることが多くなっていますね。
今出ているモバイルMMORPGの有名どころは一度はやりこむようにしています。
それだけMMORPGに触れられている大河内さんですが、やっぱり一番遊ばれたのはPC版の『リネージュ』なんですか?
実はそうではないんです。
PC版リネージュは15年以上前、学生の頃に触ったのですが、初っ端に挫折しちゃったんですよね。
『リネージュM』に関わるきっかけ
それは意外なお話でした…。
そんな挫折を味わった『リネージュ』のスマホ版に携わるきっかけとはなんだったのでしょうか?
実は学生の頃のゲーム経験で挫折感を感じた中で、PC版リネージュが大変印象的だったんです。そのことが心の奥底に残っていまして…。
そんな折に『リネージュM』が海外でリリースされるというニュースを読みまして。
「様々なゲーム経験を通じて色々慣れたから、改めてリネージュの新作をやってみよう!」と思って遊び始めたのが最初ですね。
『リネージュM』にも良い意味でゲームのやりごたえはあるのですが、昔に比べればゲーム慣れして耐性がついているせいか、そこまで気になることはありませんでした。
それどころか、いざやってみると当時の挫折は何だったのかというぐらいに面白くて!
もちろん海外版なので翻訳しながらのプレイだったのですが、それでも素晴らしく面白いと感じられました。
その後、僕と同じように海外版『リネージュM』をプレイしている日本のリネージュファンの方々と、一般の一プレイヤーとして交流を持ったのですが、「やっぱりリネージュは面白いよね」という生の声を聞くことが出来ました。
そんなお話を聞いた時に、僕はメーカー側の人間として「このリネージュMが日本で出なかったら勿体無い」という危機感を抱いたんです。
それからこの話を社内に持ち帰り、日本版のリリース計画などを主導しているうちに、気がつけばPPという立場で『リネージュM』に関わらせていただけるようになりました。
リネージュMという作品について
リネージュMの魅力
今のモバイルアプリユーザーの中には『リネージュ』という作品についてほとんど知らない方もいらっしゃるかと思います。
そういった方に向けて改めて大河内さんのお言葉でどういったゲームなのかご紹介いただけますか?
僕の中の『リネージュ(M)』は”超絶コツコツ育成型のMMORPG“というイメージですね。
まず『リネージュM』は根本的なゲームの設計思想が、今の多くのPC・モバイルゲームとはかなり違っています。
5年・10年といったかなり先のことを想定してゲームを作っているため、いわゆる”レベルカンスト”みたいなやり込み度の天井が尋常ではなく高いんですよ。
そういった”カンスト”みたいな概念が実質ないと言ってもいいほどで、もはや「カンストとは一体?」というレベルです(笑)
例えば海外の話なんですけど、つい先日通称”執行剣”という、ものすごく製作が難しい超絶レアな武器が全サーバーで初めて、1本完成したんですよ。
リリースから約2年経っていて、何百万というユーザーがプレイしているゲームで、やっと1本ですよ。
この通称”執行剣”以外にも、まだ誰にも倒されていないモンスターがいたりなど、かなりのボリュームのやり込み要素・エンドコンテンツがリリース時から実装されています。
そして、これだけのエンドコンテンツを用意していながらも、実際のデータを見てみるとゲームバランスは凄く綺麗に作られているんです。
10年先を見据えて緻密に設計されているからこそ、途方も無いボリュームでありながらも、序盤・中盤でプレイヤーが行き詰まらないように様々な配慮がなされています。
そういった設計思想は今のモバイルアプリにはなかなか無いものですね。
ユーザーの進行度に応じて適宜アップデートを重ねていく形がスタンダードかと思いますが…。
モバイルアプリの開発においては間違いなくそちらが主流ですね。モバイルゲームアプリのレッドオーシャン化が進んでいる今、10年後を見越して作られるゲームを提案して、それにGOサインが出される方が間違いなく稀ですね。
来月、そして数ヶ月先のところまで見て提案するのが一般的ですし、時代に適したものだと僕も思います。
そんな中で『リネージュM』というアプリは5年、10年先を見越して制作・運営されています。かなり逆算して、どのタイミングで何を追加していくのかを決めているという感じです。
ただ、こういった長期的な目線で作られているからこそ、アップデートの中身が継ぎ接ぎにならないんですよね。この辺りのノウハウは20年近くPC版リネージュを運営してきているからこそ培われたものだと思います。
エンドコンテンツの量・種類が多く、“終わり”や”攻略の一本道”みたいなものがほとんどないゲームなので、そういった圧倒的なスケールであったりとか、遊び方を自分で決められる自由さとかを楽しめる人には本当にオススメしたいです。
一般的なゲームでは、すぐエンドコンテンツまで達成してしまうようなユーザーにも大変オススメです。
あとは3Dが苦手な人にもぜひ遊んでいただきたいです。
『リネージュM』は”2Dクォータービュー”のゲームなので、3D酔いしやすい方でもじっくりプレイしやすいかなと。
スマホアプリのグラフィックがより綺麗に、よりリアルになっていったからこそ起きる問題ですね。カメラワークなどが滑らかすぎて長時間のプレイができないなんて声も少なくない印象です。
ええ。かく言う僕もそうなんですが、FPS・TPSなどは2時間ぐらいが集中力の限界だったりします。
ゲームジャンル自体は決して嫌いじゃ無いんですが、どうしても瞬間的な情報処理に脳がついてこれなくなります(笑)
また、3Dが苦手な人だけでなく2000年代のMMORPGをやり込んでいた人にもぜひ遊んでいただきたいです。
今やPC・モバイル問わず”3Dハイグラフィック”のMMOが多いので、『リネージュM』みたいな2Dタイプのゲームは逆に珍しいですし、懐かしいと思うんですよね。
それにグラフィックが魅力の一つである反面、「グラフィックの良さ=ゲームの楽しさ」ではないと思っています。
高い目標とそれを達成した時の満足感、やり込んだ分実感できる強さ、そして仲間たちとの絆やライバルとのやり取り…、これらが合わさってMMORPGの面白さになってくるというのが僕の持論です。
そしてそこに自信があるからこそ、『リネージュM』は”ゲームの面白さ”で勝負できると考えています。
決してヌルくないゲーム
ここまでのお話を伺う限り、『リネージュM』は今のモバイルMMORPGの中でもかなり異色の存在という印象を受けるのですが、他にも何か特徴と言えるような部分はありますか?
今のモバイルMMORPGの中でも、難易度は高めになっているかと思います。
これは操作が複雑といった意味での難しさではなく、ゲームバランスの面の話ですね。
今の多くのMMOでは、遊びやすさなどを重視した結果、昔に比べてゲーム攻略の難易度がかなり緩和されており、進めて行く中で”詰まる”ことが少なくなっていると思います。
オート機能もありますし、最適化された攻略の一本道を皆が辿っていくといった状況になりやすいかなと。
確かにオートなど便利な機能の進化に伴って、総合的な難易度は良くも悪くも低くなっている印象を受けます。
そうなんですよね。
そして『リネージュM』にもオート機能は実装されているので、海外版をプレイする際、僕は最初そこまで難しくないだろうなと思っていたんです。
でも、いざ始めてからオート任せで狩りをしていたら、ほんの数分目を話している間にやられてしまいまして(笑)
「ちょっと待て!何があった!?」と思い調べたら、フィールドに出てきたボスモンスターに倒されていたことが分かりました。
こういった理不尽な要素というか、簡単にAI任せにできない感覚は今のゲームからはあまり得られないものだと思うんですよ。
サクサク快適に進めてもらうことはもちろん大事だと感じているのですが、ユーザーが躓く要因を削り過ぎてしまって、試行錯誤の楽しみや壁を乗り越えて得られる快感まで少なくなるのは損なのではないかなと、『リネージュM』をプレイ・調整していく中で改めて感じています。
最初はヌルくないゲームバランスに面食らうかもしれませんが、ものすごく奥深くてずっと楽しく続けていられるゲームなので、第一印象にめげずに遊んでいただけるとプロデューサーとしてこれ以上なく嬉しいです。
スマホアプリとしての『リネージュ』
PC版の再現と独自性
それでは次に、リネージュをスマホアプリ『リネージュM』として再構築するにあたって変更・調節したポイントなどをお聞かせください。
PC版リネージュをプレイ済みの方であれば、始めた途端に「あ、これはリネージュだ」と思っていただけるぐらい、『リネージュM』の大枠はPC版と一緒になっています。
グローバル版はリリース一周年ほどからPC版にはなかった新職業などが追加され始め、『リネージュM』として独り立ちを始めましたが、PC版にあった味や雰囲気は変わっていません。そこはご安心いただいて大丈夫です!
ただ、PC版リネージュと比べると、細かい変更は結構多いです。
例えばスキルの入手方法や敵の強さなどですね。
PC版と入手できる場所が変わっていたり、PC版より強くなっていたりしますのでそこは実際に始まってからお楽しみいただければと思います。
リネージュというIPのナンバリングタイトルを改めて遊ぶ感じで始めていただくのが良いかと思います。
グローバル版と同じものを日本に
先ほどもお話に出たグローバル版は、もうすぐ配信されてから2年経ちますが、基本的にはそちらと同じ流れで日本版も進んでいくのでしょうか?
そうですね。基本的なコンテンツなどは全てグローバル版の後を追う形で進めていきます。
あちらよりも少し早足で進めていって、将来的にはあまり差が無い形にできればと考えています。
日本版は、グローバル版のリリース半年後ぐらいのアップデートデータからスタートする予定です。
バランスが崩れない程度に「最初から面白いコンテンツをなるべく多く楽しめるようにしたい」という思いからそう決まりました。
逆にグローバル版から変えた要素などはあるのでしょうか?
日本版では、丁寧にチュートリアルを作っています。
ある程度は本家リネージュの知識・経験があることを前提として進む部分が多かったので、日本版ではリネージュについて全く知らない方でも入り込みやすいように特に力を入れて調整しています。
ただ、ゲームバランスに関してはグローバル版のものに調整を加えることなく、そのまま日本に持ってくるという形で進めています。
ありがたいことに海外で大盛況となっている今、わざわざそのゲームバランスを崩す必要はないと考えているためです。
あとは僕自身が”日本独自仕様”にしたくないと強く考えていたのも理由の一つです。
日本用にゲームバランスに変更を加えられているタイトルが実は結構多いのですが、その調整の影響でゲームバランスが海外版に比べて歪になっていたりして、一ユーザーとしてとてももどかしく感じることがあるんです。
海外ユーザーと同じ目線で高い完成度のものを楽しんでほしい、という思いがあるからこそ、日本版だけ特別仕様のゲームバランスにするつもりはありません。
最後に
それでは最後に『リネージュM』のリリースを待つユーザーの皆様に向けて、配信への意気込みなどをお願いいたします。
現在、ゲームは最終調整の真っ只中にあります。
なので情報解禁に関しては4月以降からが本番となる予定です。
また今後、サーバー名の発表や、楽しみにしている皆さまが遊べるWEBイベントなどを予定しています。どんな名前のサーバーが出てくるのかなどを楽しみにお待ちいただければと思います。
今後の情報発信は主にTwitterで行う予定です。
公式アカウントはもちろんですが、先日開設したばかりのリネージュMのスタッフアカウントなどもフォローしていただければ面白いかなと思います。
スタッフアカウントの方では、PC版リネージュのプロデューサーを務めていた川南、PC版リネージュ2のFS*を務めていた元ダーシスなど、エヌシージャパンのタイトルを守ってきた、知る人ぞ知る信頼できるメンバーが普通にTwitterで発言していますので(笑)
*FS…ファンサポートの略でGMと同じ役割を担っている。
『リネージュM』をMMORPGの原点とでも言うべき最高の作品としてお届けできるように運営一同頑張っております。サービス開始まで今しばらくお待ちください!
本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
本インタビュー内容は2019年3月18日のものとなります。
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