リネージュM(リネM)のイベント「二人の騎士」についてまとめております。イベントで得られメリットやストーリーを紹介しておりますので是非参考にしてください。
イベント・キャンペーンまとめ
「二人の騎士」イベント概要
開催期間 |
〜2020/7/29(水)定期メンテ前まで |
エヌシーファイブ以来の連続イベント
イベント「二人の騎士」は以前開催されたイベント「超異世界エヌ・シー・ファイブ」に近いイベントで、イベントが更新される度に公式サイトにストーリーが更新されていきます。
期間限定特殊ダンジョンが登場!
期間限定の特殊ダンジョン「N次元の亀裂」が出現中です。Lv45から利用可能で毎日5時間まで利用することができるSafety Zoneです。
夜中の放置狩りなどに利用すると寝込みを襲ってくる無法者たちを気にすることなく安心して眠りにつくことができるでしょう。
N次元の亀裂のドロップ情報はこちら
入場直後のエリアはモンスターが沸いていない
N次元の亀裂は入場すると必ず同じエリアに転移します。このエリアのみモンスターがポップしない仕様となっているため、手動で動かせるのであれば必ず移動させるかテレポートしましょう。
神話級変身が体験できる!
神話級変身の性能(全職業共通) |
※騎士(男)で利用した際の姿です。 |
攻撃速度+170%,移動速度+10%,詠唱速度+20%,耐久力+3
近/遠距離命中+5,近/遠距離ダメージ+5,魔法命中+2 |
最終話より新たに「神話級変身」を体験することができる変身巻物の製作が可能になりました。新たに追加されたイベントアイテム「オルビルの記憶」30個と「薄れた魔物の気」100個で製作可能です。
オルビルの記憶は次元の亀裂でのドロップか、製作にて入手可能です。イベント変身巻物(ブラック以外のレンジャー、アルフォンス、パンドラ、グンター)を10個素材にすることで製作可能です。
日本版リネージュMではまだ未実装の神話級変身ですが、もしかすると近いうちに実装されるのでは?
ラバンは素材にできないので注意
オルビルの記憶の製作素材に「ラバン」の変身巻物は使用できません。間違えて大量生産してしまうと無駄になってしまう上、薄れた魔物の気もなくなっしまうので注意しましょう。
ゲーム内では各登場人物に変身できる
ショップにて購入できる「契約のケプリシャの水晶」を使用することで上記3体のいずれかに変身できる巻物をランダムに入手することができます。
いずれも変身効果は10分しか持ちませんが、赤変身は攻撃速度+102%の効果を持つため、青変身までしか持っていない中盤層のユーザーには一時的でもありがたいイベントです。
製作で登場人物がパワーアップ!
第2週目より新たに「ラバン」「契約したパンドラ」「契約したグンダー」を製作できるようになりました。製作には「契約のケプリシャの水晶」から入手できる変身巻物と『N次元の亀裂』でドロップする「薄れた魔物の気」が必要になります。
変身時間は15分になり、赤変身の2つは攻撃速度が115%、詠唱速度は20%にパワーアップします。
製作・ドロップに新たな変身が登場!エヌ・シー・ファイブも復活!
製作 |
覚醒アルフォンス |
真パンドラ |
不敗のグンター |
ドロップ |
グリーン |
ブラック |
ピンク |
ブルー |
レッド |
イエロー |
第3週目より新たな英雄・伝説級変身が追加されました。伝説級変身は攻撃速度148%に加え、近距離命中/ダメージ+4やHP薬回復量増加+10などそれぞれ特徴的な効果を持ち合わせています。
なお、伝説級変身製作には“薄れた魔物の気”が110個必要になります。
また、以前開催された同系統のイベント『超異世界エヌ・シー・ファイブ』よりブラックを含むエヌ・シー・ファイブがパワーアップして復活します。
専用変身巻物はN次元の亀裂にてドロップします。
「二人の騎士」攻略情報
N次元の亀裂を利用しよう
期間限定の特殊ダンジョン「N次元の亀裂」を毎日5時間利用しましょう。葉っぱが限られている方はこの狩場で狩りをすることで通常より長持ちするため、レベリングが捗ります。
また、変身/MD/名誉コインがドロップするので5時間しっかりと毎日利用することでかなりの量を稼ぐことができるでしょう。
▶︎N次元の亀裂の攻略情報はこちら
ケプリシャの水晶は一応購入しておこう
毎日10個まで購入できる「契約のケプリシャの水晶」を全て購入しておきましょう。製作しても15分しか持たないのでコスパがやや悪いですが、青変身までしか持っていない方は利用して少しでも狩り効率を上げると良いでしょう。
赤以上の変身を持っている方はまた次回以降使う可能性が出てくるかもしれないので一応購入だけしておくと良いでしょう。
「二人の騎士」ストーリー
第1話「予兆」
第1話を読む
新たな次元が開かれたあの日からかなりの時間が過ぎたが、その後も特別なことはなく、今日もいつもと変わらないアデンの朝を迎えていた。
——話せる島の東にある船着場。ずっしりとした木の箱の音が響き渡る。
今日は銀騎士の村とウィンダウッドに商品を調達しに行く日。早朝から品物を整理していたパンドラは背伸びをしながら空を見上げた。
「ふぅ、なんか面白いことが起きないかな……」
最近は興味をそそられることがなく退屈しているパンドラがつぶやいた。
ケプリシャは、この頃は忙しいせいか話せる島に遊びにこなくなった。リズも、数日前に傲慢の塔に連れて行って以来、目を輝かせながら毎日のように傲慢の塔を調査しにアデン大陸に出掛けているので、暇つぶし相手がいなかった。
あれだけ調査ノートを落としたら、調査の意味が無いのでは?とパンドラは思っているが、本人が好きでやっていることなので、口に出さずにいた。
「そういえば……7階までしか行ったことなかったかな。 時間があれば8階にも行ってみようかなぁ」
ナイトバルドがいるという傲慢の塔8階は、アデンでもこれまでにグンターしか上がったことがないという。
マジックドールでしか見たことがないナイトバルドの実物に興味はあったが、まだちゃんと探索したことがなかった。
腰につけているククリの刃を研がなきゃ、と思ったその時——村の方から急いで走ってくる足音が聞こえてきた。この遅くもなく速くもない足音はリズだ、と思いながら顔を向けると、案の定、赤い髪をなびかせたリズが走りながら叫んでいた。
「パンドラさ~~~~ん!! 大変です!!!!」
「そんな服で全速力で走るほうが大変だと思うけど……そんなに急いで何かあったの?」
「ハァ……ハァ……パンドラさん! おじさんがいないんです!! 消えてしまったんです!」
「散歩でもしにちょっと出掛けたんじゃないの~?」
「そ、 それが……荷物も全部なくなってるんです! 敷物や小物も全部です!」
「なんですって!?」
リズが話すおじさんとは、ギラン村にいる物乞いのアルフォンスだった。
リズはアデン大陸に出掛けるたびに必ずお弁当を作ってはアルフォンスに渡していた。グンターの頼みでもあり、パンドラが何年も続けてきた事だったが、最近になってリズがその担当になっていた。
ただ、今までアルフォンスがギランの奥にある木の下から消えたことはただの一度もなかった。
リズは、単にアルフォンスが消えたことに驚いて知らせに来たようだが、パンドラにとっては衝撃的な話だった。
パンドラは、どうしたらいいか分からないでいるリズの肩に手を置いてなだめながら言った。
「まずはグンター様に伝えないと。 リズはこの箱を整理しておいてくれるかしら?」
「は、はい!!」
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「アルフォンスが?」
剣を磨いていたグンターが、剣を鞘に戻さず横に置いたまま驚いた表情を見せた。グンターのこんな姿を見るのはパンドラもおそらく初めてだったかもしれない。
「今さっき、おじさんがいなくなったことを知らせにリズが急いで島に戻ってきたんです!」
「アルフォンス……そんなはずが……何の『きっかけ』もなしに彼が動くことなんかないはずなのに……何があったんだ?」
疑問だらけの話をしていたグンターとパンドラの後ろに、紫の光がまたたき、一人の女性が舞い降りた。
女性は紫の水晶を袖に入れ、少し激昂した声で二人に言った。
「グンター様、アルフォンス様が『感覚』を取り戻したようです」
グンターが慌てて答えた。
「ケプリシャ、もう少し詳しく聞かせてくれるか?」
「彼は 次元の亀裂にみずから歩いて入っていきました。亀裂の前で彼に声を掛けたのですが、彼は私と契約する、と申し出てきました」
「えええええ!!? アルフォンスおじさんがみずから契約するって言ってきたって? 本当ですか?? 信じられない! 夢じゃないですよね?」
動揺するパンドラに苦笑いを浮かべ、落ち着いてケプリシャは話を続けた。
「間違いなくアルフォンス様は私と契約しました。 今、確信を持ってお伝えできることは、彼が自分で考えて話すことができるということです。
まだ身体は不自由ですが、『シェイプチェンジ』の呪いを抑えながら、しっかり関節まで動かすことができるということ、そして彼が自発的に私と会話できたということ。 そして、契約後、アルフォンス様の『きっかけ』を私も知るところとなりました。 ……今のところはこれがすべてです」
「アルフォンス……帰ってきたか……」
グンターが深いため息とともに低い声でつぶやいた。それは安堵なのか、心配なのか、はたまた期待のこもったため息なのか、誰も分からなかった。
「パンドラ、しばらくこの島を頼む。 わしも次元の亀裂に行ってくる」
「え?! ちょっと歩いただけで騎士たちに囲まれてサインをねだられると思いますよ? 熱狂的なファンはずっと後をついて来ますからね…」
そう言いながら想像しただけでも笑えたのか、パンドラが口を押さえながら笑いをこらえていた。
「確かに、生ける伝説でいらっしゃるので……ハハハ……」
ケプリシャも髪をかき上げて苦笑いを浮かべながら困っている。
次の瞬間、グンターの姿が見えなくなった。パンドラとケプリシャは驚いて辺りを見渡すが、グンターの姿は見えなかった。
「これを使えば問題なかろう」
「なるほど!インビジビリティクロークですね! …………ディテクション!!」
パンドラがディテクションの魔法を唱えると、グンターが再び姿を現した。グンターはクロークに触れながら言った。
「久々に使ったな。ではパンドラ、しばらく行ってくるぞ」
再びグンターは一瞬で姿を隠し、その場を去った。
グンターを見送った後、パンドラが振り向くと、ケプリシャは信じられないという顔で固まっていた。
「ケプリシャさん、もしかしてインビジビリティクローク、初めて見ました?」
「パ、パンドラ、どうすれば人がいなくなったり現れたりするの? クローク……? 魔法ではなくて……?」
「まったくもう、魂の契約をする預言者がこれしきのことで驚くなんて」
「どうしたらクロークだけでこんなことができるの……ぶつぶつ……物理的に……ぶつぶつ……」
預言者であるケプリシャにも分からないことが、アデン大陸にはたくさんあった。
――次回に続く
第2話「発端」
第2話を読む
アデンきっての商業都市ギランには、評判のよくない 有名人が2人いた。
1人は物乞いのアルフォンス、もう1人は狂人のラバンだ。
アルフォンスの素性に関しては、ギャンブルで破産した貴族、悪霊に取り憑かれた神官、正気を失った学者……などの様々な噂がある。
彼は一日中動きもせずに物乞いをしながら生きながらえている。
ギランでは知らない者がいない物乞いで、周囲も「アルフォンス」のようになりたくなければ何事も一生懸命にしなければと、反面教師の例にされている。
そしてもう1人の有名人、狂人のラバン。
ラバンの夢は「空を飛ぶこと」だ。
そのためにいつも両腕をばたつかせて空を飛ぶフリをしているが、他の人の目にはただのおかしな人にしか映らなかった。
彼は最近、空を覆う巨大な影を見た、と怯えながら人々に話しまわっているが、誰も気に留めなかった。
ラバンが何故こうなったのかさえ誰も気にしていなかった。
——日が昇る前の未明。
ラバンがギラン村を走りながらつぶやいていた。
いつもと変わらない行動だったが、よく寝るラバンは、本来、朝方に出歩くことはなかった。
ラバンの気配で、道端に寝ていたアルフォンスは目が覚めて身体を起こした。
ラバンは腕をばたつかせてアルフォンスの前を歩きながらつぶやいていた。
「ヘヘ……ケレニスがやって来たぞ……来たぞ……来たぞ……フィリスはどこだ、どこなんだ、どこにいるんだ?」
アルフォンスの目がバッと開いた。
勢いよく立ち上がり、ラバンに向かって走って行った。
ラバンの腕をつかんだアルフォンス。
ラバンを鋭く睨むアルフォンスはかなりの力で腕をつかんでいるようで、ラバンは顔を歪ませながら腕を振りほどこうとしたが、そう簡単には放しそうになかった。
ラバンは身体を震わせ、怯えたまま言った。
「アルフォンス、怖い!怖い!怖い!」
アルフォンスの行動があまりにも強烈だったので、ラバンはすっかり怯えてしまっていた。
それに気づいたアルフォンスはラバンの腕を放し、大きく深呼吸をして、懐からキャンディーを取り出した。
アルフォンスはキャンディーをラバンに差し出して、もう一度低い声でたずねた。
「ラバン、何を見たんだ?」
ラバンはキャンディーを受け取ると、喜びながらアルフォンスに話し始めた。
「ヘヘ……ケレニスがやって来たぞ……来たぞ……来たぞ……ケレニスが言ったんだ……フィリスはどこだ、どこなんだ、どこにいるんだ」
「……まだ日が昇っていないから、戻ってもう少し寝るんだ。それと、今の話はもう言ったらダメだぞ。そうすればもっとキャンディーをやる」
「ヘヘヘ、美味しいキャンディー。言わない!アルフォンス、話聞いてくれた、ヘヘヘ」
アルフォンスは周囲を注意深く見渡し、静かに荷物をまとめてギラン村の南門を出た。
見張りの警備兵がその光景を見て、驚いて隣で 寝ている警備兵を起こした。
「おい! アルフォンスが村の外へ出ていくぞ……?」
「やっと立ったままで寝れたのに……起こすなよ……な、なんだ?」
「止めなきゃいけないんじゃないか? 何をしでかすか分からないだろ!?」
「お、おう。 けど村の外で起きたことは俺らの責任じゃないし、引き止める必要もないだろ」
「そ、それもそうだな。 アルフォンスが村を出るなんて……こんなこともあるんだな」
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アルフォンスは次元の亀裂の前で立ち止まった。
次元の亀裂の前に1人の女性が立っている。
ケプリシャだった。
彼女はとても驚いて困惑したまま、アルフォンスに話しかけた。
「アルフォンス……様? どうしてここに……」
「次元の亀裂に行かねばならない。君と契約をする」
「……アルフォンス様、記憶が戻られたのですか?」
「記憶か……」
しばらく空を見つめて物思いに耽ったアルフォンスは、手首を回しながらケプリシャに言った。
「シェイプチェンジのせいで身体は重いが、精神はただの一度も折れたことはない。
以前、別の次元から来ていた赤いスーツの男が、わしの近くに来たとき、一時的ではあったがシェイプチェンジの呪いが弱くなった感覚があってな。
その原因を調べなければならない」
ケプリシャは悟られないよう冷静を装ってはいたが、期待と胸騒ぎ、恐怖が重なり合い、表現できないほど気が立っていた。
預言者である彼女をもってしても、アルフォンスの未来は今までまったく予見することができなかった。
なので、このような姿をしたアルフォンスを見て、ケプリシャはこれからどのようなことが起こるのかもわからず、ますます恐ろしくなる。
彼女は大きく深呼吸した後、袖から慎重に紫の水晶を取り出し、契約を始めた。
「あなたと私は魂の契約によって共感し、あなたの未来を見ることができます」
紫の水晶が輝き、光が溢れだした。
光はアルフォンスを包み、次第に眩しく発光し始めた。
光がアルフォンスを包んだまま爆発したかのように広がって消滅すると、そこには最初から誰もいなかったかのような静寂が流れていた。
静寂の中でアルフォンスとの魂の契約を終えたケプリシャが、ただ1人立ってぼんやりと正面を見つめている。
静寂の時間はそう長くは続かなかった。
ケプリシャは水晶を袖に入れると左手で口を覆った。
身体が震えながら、何か悲しみをぐっと堪えているようだった。
「グンター様が言っていたアルフォンス様の『きっかけ』とは『あの方』だったのね……」
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ギラン一の財力を誇るオルビル家は、資金が必要な君主や城主、地主など数え切れないほどの人々から頼りにされていた。
アルフォンスはそんなオルビル家の長男として生まれ、オルビル家後継者の1人として育った。
オルビル家は文武両道をモットーとしており、アルフォンスも幼い頃から武芸に勤しみ、共に武芸を磨く王族出身のグンターとも親交が深かった。
彼は人から注目されることがあまり好きではなかったが、グンターは彼の潜在能力を誰より良く知っていた。
黙々と、そして諦めずに努力する青年だった。
しかし、反王ケンラウヘルが現れるとオルビル家は反王の監視下となり、オルビル家の財力を使って反王の勢力は急成長を遂げる。
アルフォンスは、当時内戦中のエルモア地域にいたグンターの苦境を知り、危険を冒して支援していたが、そのことをケレニスに知られてしまう。
ケレニスはこれを反逆だと喧伝し、ケンラウヘルは他の富豪たちへの見せしめにオルビル家の全財産を没収、さらには一族全員を皆殺しにした。
「あの裏切り者には死ぬよりも辛い目に遭わせてやれ。絶対に自ら命を絶てないようにしろ」
ケレニスは、アルフォンスの寿命が尽きるまで自ら命を絶てないように『シェイプチェンジ』の呪いをかけた。
アルフォンスは呪いによって息をすることも苦痛で病弱な物乞いの姿に変えられてすべてを失った。
何日も経たないうちに常軌を逸した言動をしはじめ、誰が見ても完全な『廃人』と化した。
それを見たケレニスは呪いが完璧にかかったものと思ったことだろう。
しかし、ケレニスの呪いは彼の身体を支配することはできたが、精神までは支配できなかった。
アルフォンスはシェイプチェンジをかけられた後、わざとおかしくなったフリをしてケレニスを油断させることに成功した。
そのおかげでオルビル家の血を引く唯一の生き残りである孫娘から注意をそらさせ、守ることができた。
その子はアルフォンスの事情を知るギランの老夫婦に預けられ、立派に育った。
仕事が大変なことで有名なギランの雑貨店で、今では一番人気の店員として働いている。
これまで彼は、その雑貨商店から少し離れた場所で娘がしっかりと生きている姿を見守りながら、人知れず微笑んでいた。
――次回に続く
第3話「覚醒」
第3話を読む
N次元の亀裂に着くと、アルフォンスは不思議な力に覆われるような感覚を感じた。
それは呪いや敵意を持った類のものではなく、荒れ果てた次元の亀裂の世界からアルフォンスを守ってくれるかのような暖かさだった。その場に立ち、目をつむったまま微動だにしないアルフォンス。
徐々に彼の曲がった背中が真っ直ぐに伸び、凛とした姿勢で目を開けた。
彼はゆっくりと歩き始めたが、それは今までの彼とは違う、威風堂々たる騎士の足取りだった。
アルフォンスは、ここに着いてからずっと、どこかへと導かれるような感覚を感じていた。
彼はその感覚に導かれるがままに裸足で歩き続けた。
道中、巨大なモンスターがアルフォンスに攻撃を仕掛けてきたが、最小限の動きでかわし進み続けた。
絶壁の橋を渡り、後ろを振り返ると、自分を追ってくるモンスターが思いのほか多いことに気づき、アルフォンスはそっと呪文をつぶやいた。「ウィンドカッター」
アルフォンスの手から放たれた鋭い魔法の光は橋を切り落とし、橋を渡っていたモンスターは絶壁の下へと落ちた。
押し寄せて迫ってきていた他のモンスターもそれ以上彼を追うことは出来なくなった。
そしてまた、アルフォンスは導かれるがままに歩き始めた。
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——亀裂に何者かが侵入したとの情報を聞き、レッドは急いで出動した。
すでに侵入地点から動いており位置がつかめずにいたが、橋が落ちる音が聞こえて急いで向かってみると、そこにはみすぼらしい 格好をした老いた村人が歩いていた。
「あの老人は……前にドッペルゲンガーに囲まれた時の…!」
レッドは老人が気になり、気付かれないように後をつけた。
どれほど歩いたか、老人は頂上が見えない巨大な絶壁の前で立ち止まった。
少し考え込むような仕草をする老人にレッドが話しかけようとしたその時、老人が両手で絶壁を触れながらつぶやいた。
「イフリートスピアー」
空から炎をまとった巨大な槍が絶壁に降り刺さり、轟音と共に爆発が起きた。
舞い上がった土埃で遮られた視界が徐々に晴れると、錆びた青銅の剣を持つ老人が立っていた。
青銅の剣は黄金に輝き、その光は老人を飲み込み始めた。
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アルフォンスの全身を飲み込んだ光は、剣の中に吸い込まれていった。
黄金の刃を持つ剣を握るアルフォンスの後ろに、紫の光が人の形を型取り始めて、光は消えながらケプリシャに姿を変えた。
アルフォンスはケプリシャが出てくることを知っていたかのように彼女に話しかけた。
「私の知らない事実があるようだな。君と契約したのだから、すべてを教えてくれないか?」
ケプリシャはゆっくりとアルフォンスに答え始めた。
「オルビル家は、代々【次元の守護者】を務めていました。
粛清によってオルビル家がなくなり、この次元のバランスを守護するものがいなくなったため、アルフォンス様の先祖たちがN次元を開き始めたのです。
それが原因でNCブラックがアデン大陸に渡り、アデンの勇者たちと戦うことにもなりました。
反対にアデンの勇者たちがこのN次元に渡り、力を貸してくれる場合もありました。
私は契約によって、N次元が再び開かれることは予言できますが、N次元そのものを制御することは出来ません。
その『オルビルの剣』は、閉ざされた次元の壁を斬って次元を開くことも、逆に開いた次元を閉ざすこともできる剣……と言われています」
アルフォンスは何も言わず手に握られた剣を見る。
幼い頃、似たものを見たことがある気がする……
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——アルフォンスが6歳の頃。
暑くて眠れない真夏の夜の出来事だった。
寝ているふりをして、夜中に窓から部屋を抜け出して夜空の星を数えるのが好きな子供だった。
その日もいつものように星を数えていたが、下の階から騒がしい音が聞こえ、輝く剣を持った祖父が城外へ行くのを見たことを思い出した。
そして、祖父はもう戻らないと、泣きながら話した母のことも。
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「ケプリシャ、ケレニスがかけたシェイプチェンジの呪いが弱まった理由は何だ?」
ケプリシャはアルフォンスの問いにすぐさま答えた。
「1つ目はN次元のライフストリームです。オルビル家はこのライフストリームを魔力化できます。
なので、ウィンドカッターや、イフリートスピアーなどの魔法も無理なく使えたのです。
2つ目は薄れた魔物の気です。この魔物の気がシェイプチェンジと融合し、呪いを弱化させています。
この気はこの地域でしか得られません。
ここで暮らす人々にとっては気味の悪い緑色の物体ですが、オルビル家の人間はこの気を吸収できます。
一定量以上を吸収すると、一時的に身体能力や魔力の限界を超えられる【覚醒】状態になりますが、その力を制御するのは非常に困難で、使い方を誤れば自滅する可能性もあるそうです」
説明を終えたケプリシャは薄れた魔物の気を2つ取り出して、1つはアルフォンスに渡し、もう1つをレッドが隠れているところに投げた。
「うわああ!!! なんでここにいるって分かったんだ!?」
「最初から知っていました。私と契約していたことをお忘れですか?」
隠れていたレッドが飛んできた薄れた魔物の気を持ちながら出てくる。
アルフォンスが受け取った薄れた魔物の気はすでに消えていた。
「レッド、その薄れた魔物の気をアルフォンス様に渡してくれますか?」
レッドは何も言わず薄れた魔物の気をアルフォンスに渡した。
アルフォンスがそれを受け取るとすぐに、薄れた魔物の気は煙と共に手から消えていった。
驚くレッドをよそに、ケプリシャは説明を続けた。
「薄れた魔物の気を吸収すると、一時的に呪いを止められ、【覚醒】状態を維持できます。
ですが、さきほど言ったとおり、あくまで一時的です。いつまで続くかは分かりません。
それと、危険な状況が起きる可能性もあることをお忘れなく」
アルフォンスは薄れた魔物の気が消えた手を握りしめながらそっとつぶやいた。
「そう長くはかからないはずだ……」
「何をする気だ、アルフォンス」
重厚な男性の声が聞こえ、ケプリシャとアルフォンス、レッドは周りを見渡すが、3人以外の姿はない。
次の瞬間、アルフォンスの横で布がはためく音とともに【不敗の騎士】と呼ばれる者が姿を表した。
「オルビル・アルフォンス。この名前を口にしたのも久しぶりだな」
「……グンター」
――次回に続く
最終話「Legend to Myth」
グンターは、オルビル家の粛清は自分が原因だと思っていた。
その罪悪感から、話せる島に戻ってからも身分を隠して陰からアルフォンスを助けてきた。
アルフォンスも知っていたが、知らないふりを貫き通していた。「アルフォンス、お前とは積もる話が多いな……」「グンター、話は後だ。今はやるべきことがある」アルフォンスは『オルビルの剣』を握って谷の中へ走り始めた。
グンターとケプリシャ、レッドもその後を追った。
アルフォンスはモンスターたちを切り捨てながら進み、薄れた魔物の気を吸収するたびにアルフォンスの力とスピ―ドは格段に増加していった。
そんなアルフォンスの姿をグンターは後ろからじっと見守った。
その時、ケプリシャの背筋に寒気が走った。
水晶を取り出してギラン村を映し出すと、コロシアムの方からケレニスとケンラウヘルが村へ向かっているのが見えた。
「ケ、ケレニス……ケンラウヘルまで……」
覚醒したアルフォンスはまるで使い方を知っていたかのように両手で剣を持ち、大声をあげながら空を斬った。
すると、斬った部分がガラスのように割れ、白い光が漏れ出始めた。
ケプリシャは信じられないといった面持ちで目をみはった。
「次元の剣……本当の話だったんですね」
割れ目は徐々に広がり、ギランのコロシアムに通じる亀裂ができた。
アルフォンスがその亀裂に入ろうとしたとき、グンターがアルフォンスの腕を掴んで止めた。
「アルフォンス、このまま村に行くとすべて終わるぞ」
薄れた魔物の気を吸収して力が開放された青い瞳のアルフォンスはグンターに向かって言う。
「フィリスが狙われている……」
「今まで耐えてきた時間を無駄にする気か。別の方法を探すべきだ」
「グンター……私には何があっても守らなければならないものがある!君に剣を向ける私を許してくれ」
グンターは首を狙ったアルフォンスの攻撃を避け、1対1に持ち込んだ。
鞘から剣を抜き、クロークを脱ぎ捨てたグンターがアルフォンスに襲いかかる。
「ショックスタン!」
グンターの攻撃に、アルフォンスもスキルを使う。
「カウンターバリア!」
騎士同士の真剣勝負。
スタンとスタンがぶつかり合う一進一退の攻防が繰り広げられた。
その光景を見ていたレッドが真剣な面持ちでつぶやく。
「す、すごい。二人ともAC-250超えてそうだな……紋様か?コレクションか?」
「え?」
ケプリシャは怪訝な顔でレッドをみる。
「あ、なんでも無いです……」
戦いはそう長くは続かなかった。
グンターのブレードスタンがアルフォンスに命中し、アルフォンスは手から剣をこぼれ落として気を失った。
倒れたアルフォンスを受けとめたグンターは、ケプリシャとレッドに言った。
「薄れた魔物の気をできるだけ多く集めてギラン村に向かうんだ。すぐに後を追う」
「わ……わかりました」
レッドはそれを聞くと同時に走り始め、グンターの頼みを仲間に伝えようとしているようだった。
レッドが絶壁から飛び降りると、6つの光がレッドのもとに集って 見事に着地した。
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ケレニスはギラン村の中央で立ち止まった。
ケンラウヘルも横で腕組みをしながら辺りを見渡していた。
悪名高いケレニスがケンラウヘルを連れて直々にギラン村に来るというただならぬ出来事に、村人たちは固唾を呑んで見守っていた。
ケレニスはアデン商団の前を通りながら、鋭い口調で彼に話しかけた。
「あらあら、またずいぶんと肥えたようね?前はあんなに筋肉質だったのに」
「ア……アハハハ。この太っ腹も年季が入って良くないですか?」
少し緊張したアデン商団が頭をかきながら、ぎこちなく笑った。
ケレニスは、武器防具商人のバジルを一瞥し、緊張する血盟商人のリンの前を通り過ぎると、倉庫番のノディムの前に立った。
「えへへ……ケレニスさま、何か預ける物でも……」
ケレニスは何も言わずに後ろを振り向くと、雑貨商人のジミニと目が合った。
ケレニスはジミニの方に近づいていき、指で彼女の顎を持ち上げて、睨むように顔を見た。
「ど、どうしたんですか……ハハハ」
「あなた、名前は?」
「ジ、ジミニと申します……」
「どこの家の?」
「シャゼル家のシャゼル・ジミニです」
「どうやらあなたが一番怪しいわ……ちょっとついて来なさい」
ジミニは拒む間もなくケレニスに腕を掴まれて引きずり出された。
辺りが騒然とし始めたその時、偉大な旅行者の後ろで、顔を隠したグンターが誰かに指示を出した。
次の瞬間、ジミニの近くにある郵便箱の草むらに隠れていたグリーンが、薄れた魔物の気をジミニの背中に素早く投げ込んだ。
薄れた魔物の気はジミニの背中に触れると同時に消滅し、ジミニの体に吸収された。
ケレニスに抵抗するジミニの体を薄い青のオーラが覆いはじめ、ジミニはケレニスの手を振り払いながら叫んだ。
「痛いって言ってるじゃないですか!!!!」
強烈な突風と共に青い光がジミニの体から放たれ、ケレニスを押し出した。
ケレニスは呆気に取られた顔でジミニを見ていた。
「これは……アブソリュートバリア?」
ジミニを覆っていたバリアはすぐに消え、ケレニスを押し出した突風もすぐにやんだ。
それを見ていた住民たちはざわつき始め、ケレニスに対する不満を口にし始めた。
「回復剤を売る雑貨商人の子になんてことを……」
「なんだなんだ。ケンラウヘルの妾にでもするつもりか?」
「ジミニは何も悪いことはしてないのに……なんで急に……」
不穏な空気に感づいたケンラウヘルが、ケレニスに近寄って耳打ちする。
「この小娘がオルビル家の人間だという決定的な証拠はまだない。この人目では赤騎士団とその支持者にも情報が伝わってしまう。
今は引け」
「ですが、今のは……アブソリュートバリアでは!?」
「カウンターマジックの巻物が暴発したのだろう……今は引くんだ」
ケンラウヘルの話を聞いたケレニスは、大魔術師の自分がなんとか使えるアブソリュートバリアを、こんな小娘が使えるはずがない……と自分に言い聞かせ、怒りを押し殺した顔でジミニに背を向けた。
「フン……証拠が見つかれば、この手で殺してやる……」
ケンラウヘルとケレニスはそのまま北の方へと去っていった。
二人の姿が見えなくなると、緊張の糸が切れたのかジミニはそのまま泣き崩れ、周りの村人たちが慰めた。
隠れていたグンターは、村人に気づかれないように草むらの中にいるグリーンに親指を立て、グリーンも南側の家の後ろに隠れていたケプリシャとレッド、そして仲間たちに向かってそっと親指を立てた。
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一連の騒動が過ぎてからまもなく、いつもの場所でアルフォンスは目を覚ました。
周りを見渡しギラン村だと気づくと、焦るように雑貨商店にいるジミニを確かめた。
そこには、普段と変わらず雑貨を売るジミニがいた。
その時、ケプリシャからの伝言がアルフォンスに届いた。
ケプリシャは彼が気を失っていた間に起きた出来事を説明し、それを聞いたアルフォンスは気が抜けたように笑った。
「またあいつに借りを作ってしまったな……」
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―――4日後。
雲ひとつ無い快晴のもと、木の下でアルフォンスは寝ていた。
そんな彼の前に現れた黒い影。
人の気配に気づいたアルフォンスが目を開けると、そこにはケレニスが立っており、何も言わずにじっとアルフォンスを見下ろしていた。
アルフォンスは体をゆっくりと起こし、跪いて物乞いを始めた。
「こうみえてわしゃ、昔はすごい大金持ちだったんじゃ……べっぴんさんや……どうかお施しを……」
ケレニスは少し考え込みながらアルフォンスを観察すると、懐から100アデナをアルフォンスに投げ捨ててつぶやいた。
「うーん……呪いに問題は無いみたいだけど……」
「ありがてぇ……この金は必ずや博打で儲けて返しますんでぇ……」
「 今は落ちぶれてっけど、わしゃ元々大富豪だったんじゃ……バカでかい豪邸に女に不自由しない大富豪!……グヘヘ……」
ケレニスはアルフォンスを憐れむように一瞥すると、何も言わずテレポートでその場を去った。
ケレニスが去ると、アルフォンスは跪いていた脚を崩し、また木の下でくつろぎ始めた。
「ジミニ……いや、フィリスが無事でよかったですね、アルフォンス様」
木の後ろからケプリシャが話しかけてきた。
アルフォンスは木にもたれかかりながら、笑みを浮かべて答えた。
「そうだな、無事で本当によかった」
――― 完 ―――
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