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デッキ構築タワーダンジョン『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』が4月23日に発売される。本稿では先行プレイおよび、金子一馬先生に行ったインタビューの模様をお届けしていく。

『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』ってどんなゲーム?

テンポ感良しなデッキ構築タワーダンジョン

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『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』は、先行作品『神魔狩りのツクヨミ』の要素を継承しつつ新作として開発されたNintendo Switch向けタイトル。ジャンルはデッキ構築タワーダンジョンだ。直感的かつ高い戦略性が本作の特徴となる。同時に、濃密で妖しさに満ちたストーリーも見逃せない。

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それもそのはず、本作でコンセプトプランナーを務めるのは『女神転生』や『ペルソナ』シリーズの企画・開発に携わった金子一馬先生なのだ。神話的で悪魔的な物語が、バベルの塔のような超高層複合施設「THE HASHIRA」を舞台に繰り広げられる。

『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』はローグライトカードRPGとしては珍しいスタイルで行われる。デッキ構築やそのバランスなどは従来のローグライトカードバトルを思わせるバランスを保っているが、3枚の手札(「神魔札」)、最大3体の敵というバランスが独自性を生んでいて面白い。

手札を式神のように扱い最大3体の敵を屠れ!

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3体の敵はそれぞれ「目の前の手札」を攻撃してくる。これに対し、手札には攻撃と防御のステータスが割り振られていて、敵の攻撃が防御値を超えるとプレイヤーへのダメージとなるのだ。そのため敵が攻撃してくる先に防御値がある手札を移動、設置してターンエンドする必要がある。

そして、つまりこれは最大で3ラインからの同時攻撃に耐えなければならないということ。デッキ構築型ゲームは大概が1v1で展開されるが、こちらは集団戦が行われているような印象だ。

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攻撃には手札を消費するため、敵の攻撃を防ぐにはガードを固めないといけない。完全防御をすればHPを減らすことなく、次ターンを迎えられるため守りを固めたい……と思うが、本作はデッキ構築カードゲームだ。守りばかりを強化すれば、攻撃面が心許なくなり、倒せる敵にも押し切られていくだろう。

しかし、うまくバフ・デバフを纏えれば、同一ターンで複数の敵を一掃することも可能だ。これがテンポの良さを生んでいる。初めはそこまで上手く手札を切れないだろうが、慣れてくると素早くカードを出しスピーディに遊んでいくことができるだろう。

プレイアブルキャラは4+1!

ローグライトカードRPGには「最終的なデッキ構築が似たような形になりがち」という問題もあるが、本作に関しては安心してほしい。

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ツクヨミ06_満月デッキ ツクヨミ08_半月デッキ

主人公である「ツクヨミ」たちには「十六夜月のツクヨミ」「新月のツクヨミ」「満月のツクヨミ」「半月のツクヨミ」の4人が存在していて、本作は彼らの群像劇でもある。プレイヤーはこの4人を別々に操作していくことになるが……そもそも“使用するカードプール自体が異なる”のだ。「こういうデッキ構築をすれば強い!」という自分なりの攻略法は生まれるだろうが、ひとつの戦法ばかりとは決してならない。

ツクヨミ11_登美のりこバトル

さらに、敵役である「登美のりこ」も特定の条件を満たせばプレイアブルキャラクターとして登場する! 手持ちのカードとして「酒呑童子」や「第六天魔王・信長」などの強力なボスを扱い、オド(アクションポイント)を操る。プレイフィールはかなり面白そうだ。物語においても、彼女の視点から「なぜ今回の事件を起こしたのか」の背景を知ることができるぞ。

偽の神「オオカミ」によるカードイラストも健在

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本作は偽の神「オオカミ」による生成カードも見どころの一つだ。『神魔狩りのツクヨミ』ではゲームシステム自体に生成AIシステムが搭載されていたが、本作はそこでユーザーが生成したイラストの中から厳選されたイラストを収録しているという。余談だが、この「ユーザーが生成した数多のイラストから、人力で良いものを選定する」作業はかなり大変だったとのこと……!

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「オオカミ」は、AIチックかつ“神らしく”大仰な口調でプレイヤーの行いを審判し、その結果に応じてカードを授けてくれる。プレイヤーの行動によって神魔の種類やイラスト、性能が変化する仕様となっている。……イベントでは良い行動を心がけたいところ。

『デビル メイ クライ 5』からダンテたちが参戦!

そして驚くべきことに、『デビル メイ クライ 5』から「ダンテ」「ネロ」「バージル」が参戦する。これは、過去に彼らの魔人形態を金子一馬先生がデザインした縁もあって実現したコラボレーションだ。

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今回のデモプレイでは実際にダンテと遭遇し、戦闘することができた。こちらも主役たる「十六夜月のツクヨミ」だが、ダンテも主役キャラだ。率直に言って、対峙した際の威圧感が半端ない!

無事に戦闘イベントを終えると、なんとダンテがカードとして味方になってくれる。このカード効果が原作リスペクトに溢れていて面白い。

1ターンのうちに攻撃を重ねることで、「スタイリッシュランク」が溜まっていく仕様となっている。本作では攻撃を連ねるごとにこのランクが上昇し、カードが強化されていく仕様となっている。

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今回のプレイでは、ダンテの特性に合わせて「ひたすら連撃を叩き込む」デッキ構築を試みた。防御力へのバフが少なくなるため脆くはなるし、そもそもダンテが手札に来なければキツいと言うジレンマはあったが、「スタイリッシュランク」発動後に連撃キャラを引けると、とことん強い。

その結果、はじめは弱いと思っていたカードが覚醒したかの如く活躍するように。このように“戦略を見つけ出した瞬間”は実に嬉しいものだ。

“金子一馬”な世界をたっぷり味わえる世界

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前述の通り、本作は物語の没入感も非常に高い。“金子一馬”という名前に惹かれたファンにとっては、むしろこちらがメインコンテンツかもしれない。

主人公たちは超高層複合施設「THE HASHIRA」の最上階を目指す過程で、各フロアの様々な部屋を探索する。そこで待ち受けているのは、施設内で働く多種多様な人々や、不気味に話しかけてくる神魔たちだ。

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例えば店員が強盗に襲われている場面に出くわした際には「すぐさま助けるか」、「他のタスクを優先するか」という選択を迫られた。また、「登美のりこ」シンパに遭遇した際は、作業服を着て彼らの中に紛れ込むか、力で蹴散らすかを選ぶことができる。そしてこの選択は、「オオカミ」にジャッジされるのだ。

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こうした選択肢は、神魔を相手にする際にも発生する。いかにも悪魔らしい重厚な存在と対峙することもあれば、「歩きスマホをする人間」がそのままゾンビ化したような異形に問い掛けられることもある。神話レベルのプレッシャーから一転、一般市民の目線にまでスケールが急降下するこの奇妙な感覚こそ、「まさに金子一馬作品!」と言える魅力だ。

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詳細は伏せるが、今回体験したデモプレイの最後には、背筋がぞくりとするような不気味なイベントが用意されていた。「そうか。この神魔なら、こういう残虐な行いをするよな」という、新解釈でありつつ、納得できる神魔の世界。「求めていたのはこの“怪奇”だ」とファンを唸らせる展開が待っているので、大いに期待してほしい。

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ちなみに、本作はストーリーのクリアのみでも約20時間ほどのボリュームになるという。エンドコンテンツやカードコンプリートまで含めると、もはや計り知れないほどのプレイ時間になりそうだ。ちなみに、物語そのものはデジタルノベル形式でいつでも振り返ることが可能。ローグライトカードバトルが苦手なファンへの手厚い配慮も嬉しいポイントだ。

怪奇な世界を存分に楽しもう!

さて、総評として言うのなら『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』は「長くゲームに浸りたい人にこそ勧めたいタイトル」である。

まず、プレイアブルキャラクター(デッキビルドの軸)の豊富さと、ローグライトに不可欠なテンポの良さが両立。これがジャンル特有の「戦術が固定化して飽きる」「テンポの悪さから離脱しそう」という落とし穴を克服している。

そして何より、物語が鉄板で面白い。九龍城砦のように混沌とした「THE HASHIRA」を舞台に、本格的なオカルトホラーのシリアスさから、思わずツッコミを入れたくなるような独特の緩いイベントまで、金子先生のエッセンスを存分に堪能できるのだ。

本作は、金子一馬ファンはもちろん、様々なゲーマーにも強くおすすめしたい。特にオカルトチックな世界観が好きな人であれば、間違いなく心に刺さる一作となるはずだ。

【インタビュー】金子一馬の世界、再び

続いては金子一馬先生へのインタビューをお届けする。『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』の内容はもちろん、金子一馬先生がどのような作品に影響を受けてきたかまでをお聞きした。“伝説のクリエイター”という存在感は確かに感じ……筆者はいたく緊張したが、それ以上に親しみやすいお人柄も知ることができた。

『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』はどう生まれた?

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――まずは、『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』リリースまでの経緯をお教えください。

広報スタッフ:約1年ぐらい前に『神魔狩りのツクヨミ』を発表させていただいたんですが、ファンの方々からはずっと「金子さんの新作はコンシューマーゲームでやりたい」という声が寄せられていました。

金子さんはずっとコンシューマーゲームのタイトルに携わっていたので、コンシューマー機に慣れ親しんだファンが非常に多かったんですね。弊社も、アプリゲームのみにこだわっているわけではなく“届けたいユーザー体験に応じて適切なデバイスを選ぶべき”という考えを持っています。

そういうファンの声がありつつ、そして今弊社には金子さんがいる。それなら、“新しい体験の届け方”としてここで初のコンシューマーゲームに取り組んでみるのも良いのではないかと、『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』の企画が動き出しました。

金子:シンプルに言うと「コンシューマーを望んでいる声があった」ということですよね(笑)。

――改めて、金子一馬先生の今作での立ち位置や、今までのゲーム業界でのお仕事についてお伺いできますか。

金子:今作では、コンセプトプランナーとなっています。自分の仕事としては、「こういうゲームを作りますよ」という企画やゲームの世界観設計をしていくわけです。そして「こういう立ち位置で主人公たちがいて、こういう敵が現れ、こういう理由で戦います」という動機づけを破綻なく作っていく。

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それができたらキャラクターデザイン、「そのキャラクターがどうして冒険しているのか」という理由を考えていくわけですね。それで、最終的にお話も考えていっちゃう

後はライターさんが仕上げてきたものをチェックしたり、絵のスタッフが背景を描いてきたものをチェックしたり、修正依頼もしたり……。

――想像よりもガッツリと制作のシーンに関わられているのですね!金子先生が関わられた過去作についても同様なのでしょうか。

金子:過去の仕事を挙げると、以前はアトラスで『女神転生』シリーズなどを作らせてもらっていましたが、やっていたことは今と全く同様ですね。お話も考えて、コンセプトも考えて。今とほぼ同じです。

再びかつて描いた神魔と向き合う“神魔画家”

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メジェドが布だって、誰が決めた!

―― 『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』では、以前に向き合った神話的存在と改めて向き合うこともあったかと思います。改めて神魔と向き合う中での心境の変化などはありましたか?

金子:もちろんありますね!

原点回帰的に「もう一度、解釈から再び行いたい」という考えがあって、それに沿ったストレートな表現を行っています。「新しく今の自分のセンスで書いてみよう」という感じですね。

たとえば面白いところで言うと、「メジェド」です。メジェドに関しては、もう壁画に絵が残っているので基本はそれに沿うのですが、解釈として落とし穴があります。みんなメジェドを「オバケのQ太郎」みたいなイメージで考えているんだけど……実はあれ、布とは一言も書いていない!

――確かに!誰も柔らかい素材だなんて言っていませんね。

金子:壁画には、他にも樽みたいな壁画があったりするので、そこから「テラコッタ(素焼きの焼き物)」みたいな硬い素材じゃないかとも考えられる。

そしてメジェドには「打ち倒す者」という意味もあります。じゃあ、“目からビームを出す防衛兵器”――イスラエルのアイアン・ドーム(防空迎撃兵器)みたいな感じかなと考えて、硬そうなデザインにしました。足が見えているので、兵器「メジェド」の中には、人が入っているのではないでしょうか?

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メジェドに追いかけられてみたかったと言う金子先生!

――たしかに、イラストをよく見ると硬そうな質感になっています。

金子:解釈で言えば、ボスの「疱瘡神」とかも面白い。昔の人は風邪を「何かに取り憑かれた」と考えて“疱瘡神という神様”を生み出したわけだけど……研究の結果、一周回って合っているんですよ。ウイルスって遺伝子を持っているでしょ(笑)。つまり、“何かに取り憑かれている”わけです。

――そうですね! 見えないものに寄生されている状態です。

金子:そういう視点で捉えていけば、疱瘡神を再度解釈してモンスターで出す場合には、一周回ってウイルスらしき存在に顔をつけたりする必要がある。

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――「マッドチャリンカー」など現代を風刺するキャラもいますが、あれも金子先生が?

金子:実はああいうのばっかり考えている! 自分の過去作にも出てきていたでしょ(笑)。

「マッドチャリンカー」は元々、電動ママチャリでキレ気味のお母さんにしようとしていたら……スタッフのお母様がそういうスタイルで生活されていて、怒られてしまったんです。これはちょっといけなかったなと反省して、誰かわからない感じの怪しい人にしました。

金子一馬の「デザインへのこだわり」

――今現在、最も印象に残っているイラスト・キャラクターは何ですか?

金子:やっぱり、今1番印象に残っているのは、最近のツクヨミたちのデザインです。

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ツクヨミのデザインで、頭部に鳥居を思いっきりつけてみたりとか! 袴っぽい意匠をパンツに施し、後ろ前のベルトで止めたりもしています。これは構造上、水兵が着る「セーラーパンツ」に似ています。ただ軍服などのように機能美も考えながら作っているので、そこらへんを意識しつつ、機能美とデザインを融合する感じでできたかな?

――今回『神魔狩りのツクヨミ』からボスが追加されましたが、これらも全て金子先生の描き下ろしですか?

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金子:自分が描き下ろしたものと、ディレクションをしてスタッフが作ったものがあります。開発ディレクターの田岡さんが「ボスが少ないから増やすよ!」と言って……大変でした(笑)。追加だけでも20体以上いますもの。

AIと神魔、現代と古代の融合

偽の神「オオカミ」はどう作られた?

――偽の神「オオカミ」の濃厚な文章が、オカルト好きの私にはすごく刺さりました。これはどのように形作られていったのでしょうか。

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金子:オオカミのセリフは、『神魔狩りのツクヨミ』では生成AIが紡いでいるんですよ。ただセリフの元になる材料はこちらが設計したもので、怪しさが出るように調整していますね。

広報スタッフ:金子さんとシナリオライターが設計した“怪しさ”が正しく反映されるようにチューニングされたテキスト生成AIを実装していました。今作でもその口調をプリセットで再現しています。“オオカミの口調”誕生のルーツを辿ると、“怪しさの設計”から生まれたAI製テキスト、ということになります。

金子:“偽の神”として正しくAIっぽい使い方をしたのかな。“ポイントを食わせればそれっぽくなる”ということで。

余談ですが、試行錯誤の段階で、試しにクトゥルフ神話をAIに覚えさせてセリフを書かせてみたことがあります。すると形容詞みたいなのが出まくって全然話が前に進まなくなりました(笑)。

――たしかに、クトゥルフ神話は形容詞で溢れていますね(笑)

AIには邪念がないから、まだ人間に及ばない

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――AIで金子先生のイラストを再現しようという発想自体がすごく先鋭的だと驚いたのですが、その発想はどこから?

金子:元々、コロプラの方で「AIを使ってゲームを面白くできないか?」と考えていたらしい。ビジネスとしては新技術に先に手をつけた方が有利ですよね! ただし、やっぱりAIにはセンシティブな部分もある。で、そこにセンシティブな要素をクリアできる、濃いキャラの僕が入ってきた(笑)。そこで、ゲームの中でカードを作るシステムの名前を「AIカネコ」という名前にして出しましょうと。

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でも、最初は「ロールプレイングを考えてよ!」みたいな感じで泳がされていました。あるタイミングで「実はAIのゲームを考えているんだけど、どうかな?」という打診があって(笑)。ちょうど『ツクヨミ』のベースとなるものがあったので、それをブラッシュアップしていく中、ローグライトカードゲームでAIカードを生成したらいいんじゃない、という発想に行きつきました。

――「最先端の技術と太古から続く神仏の融合」については、先生ご自身どうお考えでしょうか?

金子:面白いのは、結局人間は生きていく上でやっぱり他責というか、うまくいかないのは他のせいにしなきゃいけないところもあって、神様にお願いしたいという気持ちが生まれる。人間が意識を持ち始めた頃からそういうのが同時発生したんでしょう。それが神です。

そしてコンピューターが発達した時に、神様の世界とコンピューターの類似性が明らかになってきた。

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……新宿2丁目あたりで飲んでいるとマリー・アントワネットの生まれ変わりとか坂本龍馬の生まれ変わりとかにいっぱい出会えるんですよ。いっぱいいるのは変じゃないですか! でも、コンピューターに照らし合わせて気づきました。データのコピーです。神社の分け御霊と一緒です。

――概念あるいは魂のコピー&ペーストですね。

金子:ユングのいう「集合無意識」と「サイバー空間」は同じだと思うし、ビッグデータの集積であるAIなどに名をつけた瞬間に「個になる」という考え方も、集合無意識に名前をつけ神にする行為と同じです。

そういう意味で最先端テクノロジーと神仏は相性がいいのです。

――逆に、先生がAIに関わった中で「これはAIにはまだ無理だな」と思われたことはありますか?

金子:AIは、最終的にアイデアそのものを考えられない。アイデアを考えなきゃいけないのはまだ人間の仕事です。

AIで色々なゲームが作れるようになっているけど、自分の特徴的なデザインや世界観を反映したものがどこまでできるのか、という疑問はあります。自己には邪念があるから――「こうしたらファンの方が喜んでくれるんじゃないか」というのも邪念ですね(笑)。今んとこAIにはそれがない。

――「邪念」とクリエイティビティの関係性は興味深いですね!

金子一馬先生の源流を知ろう!

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――実を言いますと、今回は金子先生の発言を記録して、後のゲーム研究に役立つような記事を残したい……という個人的な裏テーマがございます。宗教学などで影響を受けた作家などはいらっしゃいますか?

金子:信仰は特に持っておらず、宗教学などで影響を受けた学者さんもあまりいませんね。どちらかというと幼少期の「怪獣」文化の延長で、悪魔や神様が好きになりました。子どもの時にジャガーバックスから出ていた『世界妖怪図鑑』などで「こういうのがあるんだ!」と感動してハマっていきました。そして、思春期の頃って、宗教的なことなどを色々考えるものじゃないですか。そういう本――たとえば黙示録だとかそういうものを「なるほどね」と思いながら読んでいました。

――その当時から原典をしっかり読まれていたのですね!

金子:まぁ、読んでいたと言っても、今思うと、当時はちゃんと理解してはいなかったですね(笑)

一般的に「聖書」って言われるとぼんやり「あぁ〜イエスさんが書いたやつね!」みたいな把握だと思います。でも別に聖書はイエス・キリスト本人は書いていないんですよね。もちろん、新約聖書と旧約聖書が違うのも、日本では知らない方も多い。旧約聖書ベースでイスラム教に発展していることとか。もちろんそれはしょうがないことですが、自分はそこに興味があった。

最近は、「アジアに目を向けよう」ということで日本の古事記とかを色々読んでいます。すると「昔自分が読んでいた漫画の原点がここにあったんだ!」などと新たな気づきもありますね。

――先生は「KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ」公式Xにて本作に登場する神魔の数々についてお話しされていますね。知識量の多さに驚かされます。たとえば「天津甕星(アマツミカボシ)という神については、どうご存じになられたのでしょうか。

金子:ゲームを作る過程で色々調べているうちに知識としてたまってくるイメージです。日本には古事記と日本書紀があるじゃないですか。天津甕星(アマツミカボシ)は、古事記には出てこないものの、日本書紀には登場し記録として残っている。今回の「KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ」は日本書紀ベースの作品が結構多いです。

――なるほど。

金子:天津甕星(アマツミカボシ)は、「天」と書いてあるのになぜか天津神に反抗している。なので、「もしかしたらルシファーなんじゃないか」という説があります。そこで今回、それらを混ぜてみると新たなキャラクターが生まれるわけです。

そういう意味では、色々知っているというのは武器になりますね。

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――ルシファーと天津甕星(アマツミカボシ)の関係性のように、先生は各国の神話が似ている理由についてはどうお考えですか?

金子:自分はまず“都市伝説好き”という要素があるので、「日ユ同祖論(日本人の先祖が古代イスラエルの一部から発展しているという都市伝説)」なんかに胸が躍ってしまいます。そういうのもあって、神が世界中の豪族――各国の支配者が民衆を従わせるために権威づけをする、「ツールとしての神話」だったと思ったりもするのです。

共通のベースソースがどこかにあって、それをカスタマイズしているから離れた箇所の神話が似てくるんじゃないかな……とか考えちゃいますね。古代に繋がりがあったという前提で考えると、アマテラスとスサノオも実は神じゃなくて豪族の名前と見ることも可能です! 東の方には「スサ」という国も実際にあるし、シュメールとの関係でいうと「シュメール=すめらみこと」という語呂合わせもある!

――そういうことに考えを巡らせると、ワクワクしてきますね! 若いころにはどのような作品に触れられていたのでしょうか。

金子:漫画とテレビが大好きで、『ウルトラセブン』、『ジャイアントロボ』が大好きでした。ロボットや円盤が出てくるキッチュなセンス・オブ・ワンダー……あの当時のセンスが今にも活きています。そして小学3年生ぐらいのとき、『デビルマン』の原作漫画を読んでその展開にショックを受けて、それから永井豪先生を“作家で読んでいく”という思考になりました。

余談ですが、以前の自分のゲームに歌舞伎町っぽい場所が出てくるじゃないですか。これには2つ理由があって、『デビルマン』の地下室で飛鳥がデーモンと合体する場面がディスコなんですよ。理性があるとデーモンと合体できないから、みんな踊って酒とかをやるという。

もう一つの理由は、自分自身ディスコカルチャーにどっぷりハマっていた時期があって、歌舞伎町とか六本木で遊んでいたということ(笑)。そういう経験が世界観に入っているんですよ。

最近は実話怪談がお好き!

――金子先生の若い頃のエピソードなどをお聞きしたいです!

金子:いっぱいあるんで逆に言えないんですけど(笑)。学生時代は『横浜銀蝿』的な世界で生きていましたね。

――『横浜銀蝿』ですか(笑)!(註;「ツッパリ」、「暴走族」などのテーマで一世を風靡したロックバンド)

金子:昔はです(笑)。でも、そういう経験がキャラクターデザインにも繋がっているんです。キャラクターデザインって、ただのイラストじゃなくて、そのキャラクターの動機なんですよ。キャラが選択をするには動機が必要で、それには色々な経験が必要になってくる。昔、ナンパしに行って「バカ」とか言われたりしたこととかも全部ネタになる(笑)。

割と恵まれていなかったので、ものすごい反骨精神があるんですよ。ただそれが犯罪に向かわないで、“なんとなく楽しいヤツ”の方に収まった感じです。

――様々な精神、感情の発露がクリエイティブに向かう、根っからクリエイターだったということですね。

金子:そのまま暴れちゃうとまずいから、「マッドチャリンカー」みたいにちょっともじってやろうとか、そういうとこに行くんでしょうね。

――他にはどのような文化に親しまれていたのでしょうか?

金子:自宅が商売をしていてほったらかしの幼少期だったので、古本屋や貸本屋にもよく行っていましたね。アシモフなどのSFをひたすら読んでいました。アーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』も好きですね。

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映画でいうと『2001年宇宙の旅』を中学生ぐらいに初めて見て、わからないながらもぐっと胸に迫るものがあった。今でもキューブリックが好きで、『シャイニング』の床のパターンをゲームの絨毯の柄に使ったりもしています(笑)。

ゾンビ映画も好きで。ロメロの『ゾンビ(Dawn of the Dead)』ではエキストラに「好きな格好で来てくれ」と言って、ナースゾンビとかが生まれた逸話などが好きです。あの当時のゾンビは“死後も生活を繰り返す”という要素が良かったですよね。最近のゾンビは速くてかっこいいのですが、日常を再現するゾンビが減って残念です!

――同感です!最近のゾンビは風刺的な側面が減りましたよね。

金子:文学に関しては、25歳ぐらいで真面目にチェックしようと思って、漱石や一葉を読み直しました。そこで改めて感動したのですが、『三四郎』の書き出しで若妻と同室になる場面とか「こんなに色気があるのか!」と驚きましたよ!『たけくらべ』も、大人になって読み返すとすごい描写。若い方にも、教科書に載るような作品を読み直してみると「意外と凄いよ!」というのを伝えたいです(笑)。

――最近ハマっている分野などはありますか?

金子:仕事中に音楽も聴くけど、怪談を聞くことも多いですね。音楽は、今日はK-pop、明日は80年代ディスコと色々聴いています。最近は怪談YouTuberの方がいっぱいいるじゃないですか。夜馬裕さんという怪談師などが好きで、お話の参考になるなと仕事しながら聴いていますね。

――自分も好きなのですが、金子先生に実話怪談ブームのお話を出すのは違うかもと思って控えておりました。

金子:いやいや、『新耳袋』にやられた口なんで(笑)。ピアスの穴から白い糸が出て、それを抜いたら……とかいう、あの世代。最近は田中俊行さん(呪物コレクター)とかも好きですね。

今後の展望について聞いた!

――AppMediaは若い読者が多いメディアなのですが、先生が若い層に向けて語りたいことはありますか?

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金子:まずはメッセージ的なことよりも、コンテンツに興味を持ってほしい。『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』は、最近の事件や社会問題が詰まっているゲームなので、若い子にも楽しんでいただけますよ。“昔のデザイナー”という目で見ると、若者はかしこまってしまうかもしれないけど、ちゃんと若い方に向けて同じ目線で作っています。

――自分自身、金子一馬先生へインタビューできると言うことで緊張しきりでしたが、今回お話ししたところ非常にフランクで若々しい方で安心しました。先生が目指す今後のビジョンなどはございますか?

金子:コロプラのためになることをして、お給料が上がったらいいな(笑)。

そのためには今回の『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』をIP化できたらいいなと思っています。会社への貢献もできるし、自分の作家性の部分でも頑張っていける。会社員ではあるんですが、作家性の部分で頑張っている不思議な立ち位置です。

――『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』の続編があるとしたら、次はどんな物語や舞台になるのでしょうか?

金子:個人的には、ツクヨミたちが色んな事件を、1話完結で解決していく形を毎回やっていければいいなと思っています。コストもそんなにかからないので続けられるんじゃないかと思っているのですが……上から、「もっと大きい規模にしろ」と言われちゃいそう(笑)。次があるかどうかわからないですが、ファンの方々に盛り上げてもらえると幸いです。

――今回は、ありがとうございました!

『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』基本情報

タイトル名 KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ
開発元 コロプラ
配信元 コロプラ
ジャンル デッキ構築タワーダンジョン
リリース日 2026年4月23日
価格 3,960円(税込)
対応機種 Nintendo Switch(ダウンロード専売)
公式サイト 『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』公式サイト
公式X 『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』公式X
権利表記 ©COLOPL, Inc.

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