『ペルソナ』や『真・女神転生』シリーズの作曲を務めた目黒将司が1人で開発するインディーゲーム『Guns Undarkness』の担当編集者に、目黒さんが本ラボに参加することとなった経緯や開発の裏話を聞いてきました。
講談社ゲームクリエイターズラボとは…?
2021年6月、講談社がより幅広いジャンルのクリエイターと出逢い、支援するために、クリエイターズラボ(研究開発を行う部署)が発足されました。
そのラボの中には米国のクリエイター向けクラウドファンディング「Kickstarter」との提携プロジェクト「KickstarterNaVi」、マンガ家と編集者をつなぐマッチングサイト「DAYS NEO」そして『1000万円差し上げますので、好きなゲームを作りませんか』という衝撃的なキャッチフレーズを掲げた「講談社ゲームクリエイターズラボ」の3つが存在します。
担当編集の片山さんにインタビュー
片山裕貴 / Yuki Katayama
FRIDAY編集部、月刊少年マガジン編集部を経て、クリエイターズラボに在籍。2020年9月に発足した「ゲームクリエイターズラボ」に選考段階から携わり、2021年6月より講談社クリエイターズラボにて関連プロジェクトを担う。
目黒さんがインディーゲームを作ることとなったきっかけとは?
——本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございます。早速ですが、目黒さんがゲームクリエイターズラボに参加することとなった経緯を教えてください。
片山さん: 2020年9月から始動したこのプロジェクトの第一期メンバーを募集した際、予想をはるかに上回る1260以上の応募が集まりました。
著名なインディーゲームクリエイターさんも応募してくれた中で、ふと目が留まった1枚の応募書類に「目黒将司」の名前があり、驚いたのを覚えています。
——一般の枠で応募されたのですね!!失礼ですがちょっと本人か疑ってしまいますよね(笑)。
片山さん: 正直、最初は本物かなぁって少し疑問に思ってしまったのですが、実際に講談社の3階で面接した時、メディアで見ている目黒さんがご来社されて、あっ本物だってなりました(笑)。
面接の中で、「ずっと一人で作りたかったゲームがあった」と胸の内を明かしてくれて、それを聞いている内に、クリエイターとして支援したいという気持ちが強まっていきました。だって、目黒さんみたいな『ペルソナ』だったり『真・女神転生』のようなコンシューマーゲームで活躍された方が、一人でゲームを作り始めるって、今までのムーブメントとしては、なかなかないことじゃないですか!!
正直「どんなものができるか私も、ゲーマーとして気になった」というのが私の率直な感想です。現状、大手のゲーム会社さんだとチームで作るのが基本なので、中々自分の好きなゲームを作るのは難しいと思います。そのせいか、今回ゲームクリエイターズラボに応募してきてくれた人たちの中にも、現在ゲーム会社に勤めていて、自分の好きなゲームをインディーで作りたいという思いで応募してきてくれた人がたくさんいました。目黒さんもその一人だったわけです。
——目黒さんが面接に持ってきてくれたゲームはどのようなものだったのですか。
片山さん: 今発表させていただいている『Guns Undarkness』のひな形を見せていただきました。ゲームの内容は、「銃で戦うRPG」。それまで目黒さんが携わってきた『ペルソナ』や『真・女神転生』といったコマンドRPGにゲーム性は近いです。そこに、ミリタリーやSFな世界観を取り入れた近未来のストーリーが展開する内容となっています。
——PVを拝見した時、ステルス要素などからアクションゲームなのかなと感じたのですが、RPGなのですね!!
片山さん: Unreal Engineの中にはTPSテンプレートというものがあって、そこから開発を始められたとのことでした。テンプレートから始めることで、ベースを作りやすかったりするのですが、戦闘に入る際に画面を切り替える処理のノードを繋ぐといった作業が発生し、RPGにしていくのは目黒さんいわく大変だったそうです。
たくさんの強力な助っ人が!
——開発はお一人とのことですが、作詞やキャラクターデザインには著名な方が携わっていますよね。
片山さん: これまで、ペルソナシリーズで一緒にお仕事をされていたLotus Juiceさんが作詞を担当されています。また、キャラクターデザインには現在Netflixで配信されている『攻殻機動隊SAC_2045』のキャラクターデザインなどで有名なイリヤ・クブシノブさんが携わっています。
——このメンバーを見ても、先ほど片山さんが仰っていた通り、一ゲームファンとしてどういったものが生まれるかワクワクしますね。
片山さん: そうですね!イリヤさんに関しては、ちょうどヤングマガジン編集部の紹介で、私から連絡してお引き合わせさせていただきました。
——講談社のバックアップの強さを実感しますね。
片山さん: こちらも、そうですねと言いたいところなのですが、イリヤさん自身が目黒さんのファンだったこともあり、どういう方向でオファーしてもOKをいただけていたかもしれませんが(笑)。でも、弊社のコネクションを使ってお引き合わせできたのはよかったです。
——今回のモーションキャプチャーで撮影するのはゲーム内のどこで使うモーションですか?
片山さん: 構えや歩き、走り出すまでのモーションを含め、全部です!!目黒さんからこれぐらい撮影したいですと、貰った資料を見てめちゃくちゃ一杯あるぞってなりました。大変な作業になりますが、これをすべて撮影すれば、モーションの強化はかなりできそうです。
——今回クリエイターズラボとしても初のモーション撮影とのことですが、モーションアクターの杉口さんから何かアドバイスはいただきましたか?
片山さん: いや、本当にたくさんありすぎてどこからお話すればいいか迷ってしまうのですが…(汗)。私たちはもちろん、目黒さん自身もアクターさんと相談して手探りで進めていくといった状況だったので、まずどこからどこまでの動きを、一回の撮影で切ればよいかといった初歩的なことから始まりましたね。
——確かに、我々ユーザーからしてみれば、どこでモーションが繋がっているかなんて気にしたこともないですものね。
片山さん: そうなんですよね。最初は一つのサイクルの動きを撮ればそのままゲームに使えるのかな?と思っていたのですがどうもそういう訳にはいかないみたいでして。もちろん、場合によっては、使える場面も出てくるのですが。
——それにしても、社内にモーションキャプチャースタジオを作ってしまうなんて凄いですよね。
片山さん: 目黒さん以外のクリエイターさんからも、こういったものを支援してほしいという様々なオーダーをいただきます。その中でも、上から数えて3番目くらいに「モーションキャプチャーを導入してほしい」という要望が多かったです。
講談社の中には、写真部というフィルムのスペシャリストたちが集う部署があるのですが、モーションキャプチャーも同じカメラを使うのであれば、できるのでは…?ということで内製でスタジオを持つこととなりました。
——なんかここでも講談社パワーを感じてしまいますね(笑)。
片山さん: そうかもしれません。これからも弊社の得意部分を活かしていけたらと思っています。
——資金的な援助に加え、漫画や書籍の編集者と作家さんのような関係でゲームを作れるだけでも手厚い支援だと感じていたのですが、
写真部のような他部署とも連携して講談社の技術をクリエイターさんに還元してくれるのですね!!
片山さん: 我々は総合出版社なので、中にいる私でも知らないようなことをやっている部署が社内には沢山あります(笑)。そういう意味では、こことこの部署が繋がったなど社内でも新たな関係が構築されるのは楽しいですね。
——片山さん自身、何か目黒さんの編集としてサポートしてきて印象に残っていることなどはありますか?
片山さん: 毎週お電話で近況をお伺いしながら、ストーリーやゲーム性などについて話し合っています。たまに楽しくて雑談みたいになってしまうこともありますが。
それと、実際に目黒さんからゲームの体験版をいただいてその感想を求められることもありますね。そのうえでこういった導入にした方が、目黒さんの表現したいことがよりクリアになるのでは、といった提案もしています。
——まさに作家と編集者ですね!!
片山さんは給料のほとんどをゲームにつぎ込むぐらいコアなゲーマーだと伺っていますが、その目線から見て、今面白いものはできていますか?
片山さん: もうすでに1年ほどお付き合いをさせていただいていますが、ゲームの面白さの「核」というか「コア」の部分は共有できていると認識しています。それもあって、日を増すごとに私の中でも面白いものができているぞ!っていう実感は強まっているので期待していてください!
——ありがとうございました。
『Guns Undarkness』基本情報
タイトル名 | Guns Undarkness(ガンズ アンダークネス) |
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配信日 | 2023年 |
ジャンル | JRPG |
価格 | 未定 |
対応機種 | Steam |
会社 | 講談社ゲームクリエイターズラボ |
公式サイト | Steamページ |
公式Twitter | 講談社ゲームクリエイターズラボ |
権利表記 | Copyright © Shoji Meguro |